レビュー著者: 漫画よしあし
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少年のアビス の感想と評価(良いところ、悪いところ)
良い所
- 閉塞感のある田舎町の空気と、「生きていても仕方ない」という重い絶望感の描写が、恐ろしいほどにリアルで一気に引き込まれました。ページを捲るたびに、自分もアビス(深淵)に引きずり込まれるような感覚です。
- 令児を取り巻く女性たちの狂気にも似た「執着」と、剥き出しの独占欲が本当に怖くて、でも目が離せませんでした。誰が一番狂っているのか、その底が見えない人間関係のドロドロ劇には、最高の中毒性があります。
- 峰浪先生の描く「瞳の中にハイライトがない」キャラクターたちの絶望した表情が、物語の退廃的な美しさを完璧に表現しています。特にナギの、何を考えているか分からない虚無の瞳には、抗えない魅力を感じました。
- ただの鬱漫画ではなく、「なぜ令児はこの町を離れられないのか」という呪いの正体が少しずつ明かされていくミステリー要素が本当に巧いです。母親、教師、幼馴染……全員が怪しく、全員が何かの被害者でもある。
- 全18巻、最後まで一貫して「救いのなさ」を貫き通した姿勢に圧倒されました。安易な希望を提示しないからこそ、この物語はこれほどまでに美しく、読者の心に消えない傷を刻んでくれるのだと感じます。
悪い所
- 内容が終始一貫して鬱屈としており、精神的に追い詰められる描写の連続なので、少しでもメンタルが弱っている時には絶対に開いてはいけない「禁断の書」です。読み終えた後の疲労感と虚無感が凄まじい。
- 登場人物全員に非があり、かつ全員が利己的に動くため、感情移入できるキャラが一人もいないことが最大の苦痛になる可能性があります。誰も信じられず、常に最悪の結果を期待してしまうような、歪んだ読書体験になります。
- 「心中」や「自殺」というテーマが美化されているように見える側面があるため、そうした表現に対して倫理的な嫌悪感を持つ人には、どれだけ画力が高くても受け入れがたいかもしれません。非常に人を選ぶ作品です。
- 物語の中盤、令児が周囲に振り回されるだけの受動的な態度が長く続くため、主人公としての主体性の無さにイライラしてしまう時期がありました。「もっと抗ってよ!」と叫びたくなるような、もどかしさの連続。
- 一部の衝撃的な展開が、インパクト重視で少し突飛に見えてしまうことがありました。リアリティのある心理描写の一方で、事態の悪化のさせ方が少し強引に感じられる回があったのが、少しだけ残念でした。





