レビュー著者: 漫画よしあし
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波よ聞いてくれ の感想と評価(良いところ、悪いところ)

波よ聞いてくれ

波よ聞いてくれ

著者: 沙村広明

連載: 月刊アフタヌーン

ジャンル: お仕事ヒューマンドラマコメディ

評価: 8.9/10

あらすじ

札幌のスープカレー店で働く鼓田ミナレが、失恋の愚痴をきっかけに深夜ラジオの世界へ転がり込むお仕事群像劇。暴走気味の語りと切れ味のある会話が魅力で、笑いの勢いの裏に、生活不安や自己肯定の揺らぎが生々しく滲む。放送という即興の場で言葉を鍛え、自分の輪郭を取り戻していく過程は痛快で切実。クセの強い人物同士の衝突も単なる騒がしさで終わらず、大人の不器用さとして回収される。熱量とリアルが両立した、唯一無二の現代劇。

良い所

  • ミナレの言葉が鋭くて笑いながら胸を刺される。ラジオの即興で自分を掴み直す姿に何度も勇気をもらい、読むたび背筋がまっすぐ伸びた。
  • 会話劇のテンポが抜群で、台詞量が多いのに勢いで一気に読まされる。社会人のしんどさをここまで面白く描く手腕に、素直に痺れてしまった。
  • クセの強い人物ばかりなのに誰も記号で終わらず、欠点ごと愛せる。人間の不器用さを笑いと痛みで描くバランスが絶妙で、毎回唸らされた。
  • 失恋や生活苦の生々しさがあるのに、ミナレの突破力で前を向ける。苦さと快感が同居していて、読み終えると妙な元気がしっかり湧いてくる。
  • 放送シーンの臨場感が高く、声が聞こえるような台詞回しに没入した。言葉ひとつで空気を変える快感がたまらなく、何度も読み返したくなる。

悪い所

  • 台詞と情報量が非常に多く、軽く読みたい日に開くと集中力を持っていかれる。面白いのに読む体力を強く要求され、疲れている日はきつい。
  • ミナレの暴走気味な語りが魅力でもあり、波長が合わない回では騒がしさが先に立つ。乗れない時の温度差が大きく、好みが分かれると思う。
  • 放送業界の段取りや専門用語が続く章では職業ドラマ色が強く、日常コメディを期待すると硬く感じることがあり、少し置いていかれる。
  • 人間関係が泥臭く進むため、爽快な勧善懲悪を求めると消化不良になりやすい。読後に重さが残る回もあり、気分を選ぶ読み味だと感じた。
  • 熱量が高いぶん読者側にも勢いを要求する作品で、癒やし目的で読むと刺激が強すぎる。合う日と合わない日の差がはっきり出るタイプだった。

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