その着せ替え人形は恋をする の感想と評価(良いところ、悪いところ)
本音のガチ長文レビュー(ネタバレ有)
全巻読んでの感想です。 アニメは見ていません。 普通ぐらいに面白かったです。 コスプレというテーマや設定的に最初は少し遠ざけていたのですが、読んでみると前提知識などは全く不要であることがわかって、普通に読みやすい作品でした。 物語としては、雛人形の頭師を目指す地味な主人公・五条新菜と、コスプレ好きの人気ギャル・喜多川海夢が、衣装作りを通じて仲良くなっていくラブコメディ。 序盤と終盤は二人の関係や展開がしっかり動いていって面白い。 特に序盤は、新菜が自分の殻を破って次々に新しい発見をし、成長していく過程が一番の見どころだと思う。 雛人形作りの技術を活かして初めての衣装を完成させるまでの流れは、設定の勝利という感じで素直に熱くなれる。 逆に、中盤はちょっと中だるみ感があるというか、メインの二人の関係性がなかなか進まなくて、読むのが少し億劫に感じた。 サブキャラのエピソードが増える時期でもあり、ラブコメの宿命とも言える展開なのだが、早く二人の話を進めてくれ!とヤキモキしてしまう。 ちなみに、サブキャラの話は全部読み飛ばしてもメインストーリーにはほぼ影響がない。 とはいえ、普通にサブキャラたちの話も面白くできてはいるので、そこは群像劇として楽しめばOK。 これは個人的な好みの問題になるが、後半になると新菜も海夢も「実は才能ある天才でした」感が強くなっていくのが、今振り返るとちょっと微妙な印象だったりする。 序盤の泥臭い努力が好きだった分、そう感じてしまったのかもしれない。 ただ、読んでいる最中は二人がどんどん進歩していく展開自体に引き込まれるので、そこまで気にならずに一気に読めた。 コスプレ業界のリアルさについては、自分は全然わからないので、作中の描写が正確かどうかは判断できない。 逆にコスプレに詳しい人だと、「現実はそんなに甘くない!」みたいに変なところが気になったりするのだろうか? 少なくとも、初心者が読んでいて専門用語や内輪ノリがわからず困るようなことは一切なかった。 青年誌連載ということもあり、採寸シーンのようなラブコメ的お色気要素もちょいちょい挟まってくる。 まあ、ストーリーの根幹には関係ないので、そういうお約束の展開が苦手な人は適当に読み飛ばしても大丈夫。 設定がちょっと珍しいだけで、中身は本当に普通の王道ラブコメ。 普通のラブコメゆえに面白い。 ハーレム系ではない、一対一の純粋な王道ラブコメを探しているならぜひおすすめしたい。 逆に、コスプレという設定から、王道ではない特殊でドロドロした展開を期待したりすると微妙かも。 最後の結末については、ひょっとしたら読者の中で賛否両論あるかもしれない。 個人的には、奇をてらわずこのぐらい普通に落ち着くような終わり方はとても好みだった。 二人がちゃんと向き合って恋人同士として幸せに終わる結末は、ラブコメの締めくくりとして綺麗だと思う。 余談ですが、スピンオフ作品もあるものの、あちらは全然違う作風のギャグマンガなので本編を読む上で意識する必要は全くないです。 本編だけで綺麗に完結(全15巻)しているので、安心して一気読みしてみてください。
良い所
- 海夢ちゃんの「自分の好きなものを、恥じることなく好きだと言える」という真っ直ぐな生き方に、私自身も何度も救われました。彼女の笑顔を見るだけで、明日も頑張ろうと思えるほど元気がもらえます!
- コスプレの衣装作りやメイクに関する描写がとにかく濃厚で、一つの文化を本気で描く作者の執念が伝わってきます。専門的なのに物語として完璧に昇華されていて、職人魂の美しさに何度も鳥肌が立ちました。
- 福田晋一先生の描くキャラクターが本当に魅力的で、繊細な表情や肌の質感まで伝わってくる美麗な作画に溜息が出ます。特に新菜くんが職人の目になる瞬間のカッコよさは、私の中で一生忘れられない名シーンです。
- 自分の世界に閉じこもっていた新菜くんが、海夢ちゃんとの出会いを通じて自分の価値に気づいていく姿が本当に丁寧で、親のような気持ちで応援してしまいました。二人の純粋な関係性が、とにかく尊くて大好きです。
- 全15巻を読み終え、これ以上ないほど美しく、幸福感に満ちた着地を見届けられたことに感謝しかありません。二人の成長をずっと見守ってこられて本当に幸せでした。私にとって一生心に残る宝物のような作品です!
悪い所
- 物語の随所で海夢ちゃんの魅力や衣装の細部を強調するための、かなり刺激的な描写が含まれます。私は少し恥ずかしくて、電車の中で読むのを躊躇してしまうことがあったので、読む場所には少し注意が必要かも。
- 新菜くんの職人気質ゆえの非常に低い自己評価と、それによる消極的な態度には正直ヤキモキしました。もっと自信を持ってほしいと願うあまり、彼のウジウジした姿に少しイライラしてしまったのが本音です。
- コスプレの制作工程や専門知識に関する説明パートがかなり濃厚なので、物語のテンポを重視したい私には、少し話の進みが遅く感じられて退屈してしまう回がありました。もっと二人の掛け合いが見たかったです。
- 登場人物たちがあまりに理解ある優しい人たちばかりで、環境に恵まれすぎているように見えてしまいました。現実の人間関係の厳しさを知っている私には、少し理想化されすぎた世界に映って冷めてしまう瞬間も。
- 完結してしまったことによる凄まじい喪失感に襲われています。物語として完璧な結末なのは理解していますが、大好きな二人の日常をもっとずっと見守っていたかったので、寂しさがどうしても拭いきれません。




