レビュー著者: 漫画よしあし
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ワンダンス の感想と評価(良いところ、悪いところ)
良い所
- ダンスシーンの作画表現が唯一無二。音が聞こえないはずの漫画なのに、キャラクターの動きやコマ割りから音楽のビートを感じてしまう。珈琲先生の才能の凄さに圧倒されます。
- 吃音というハンディを持つ主人公が、言葉でなく身体で自分を表現することに解放感を覚えていく物語が非常に丁寧。カボの成長と、彼を取り巻く人々との関係性の変化に自然と感情移入してしまいます。
- ダンスに打ち込む登場人物たちが一様に輝いていて、誰のシーンも見応えがある。それぞれの「ダンスへの向き合い方」が描かれることで、単なる部活漫画に留まらない人間ドラマとして深みが出ています。
- ストリートダンスという文化への愛と敬意が隅々から伝わってきます。専門的なジャンルやステップの説明も分かりやすく、読み終わった後に自分もダンスについて調べたくなるような熱量があります。
- 青春漫画としての瑞々しさが抜群。誰もが経験する「自分をうまく表現できないもどかしさ」というテーマに普遍的な共感を覚え、カボが踊るシーンでは思わず泣いてしまいました。
悪い所
- ダンスの「感覚」を伝えることに主眼が置かれているため、クライマックスのバトル結果や大会の勝敗など、ストーリーとしての明確な進展よりも「その瞬間の感情」を優先する構造になっています。結末への期待感が描写に押しつぶされてしまうと感じる方も。
- 表現が非常に芸術的・抽象的なシーンがあり、一部の読者からは「何が起きているか分かりにくい」という意見もあります。視覚的に理解するための読み込みが必要な場面もあり、全読者にとって分かりやすいとは言えません。
- ストーリー全体の進行が、ダンスシーンの演出の密度に比べて相対的にゆっくりに感じられる時期がありました。展開を楽しむよりも「今この瞬間」を味わう読み方を求められる作品です。
- 吃音に関する描写が序盤と比較して中盤以降は影薄くなってしまったように感じられ、このテーマをより深く掘り下げてほしかっという感想もあります。カボの内的なコンプレックスとの向き合い方が物語後半で変化しすぎた印象も。
- ストリートダンスカルチャーへの造詣がある人とない人とで、作品の解像度が大きく変わる可能性があります。知識なく読んでも楽しめますが、背景文化を知っているほどより深く味わえる構造になっています。




