レビュー著者: 漫画よしあし
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僕の心のヤバイやつ の感想と評価(良いところ、悪いところ)
僕の心のヤバイやつ
著者: 桜井のりお
連載: マンガクロス/週刊少年チャンピオン
評価: 9.1/10
あらすじ
陰キャ気質の中学生・市川京太郎は、同級生の山田杏奈に対する歪んだ憧れを抱えながら、教室の隅で世界を斜めに見ていた。ところが図書室や日常の小さな接点を重ねるうちに、市川は山田の素直さと不器用さに触れ、他者を遠ざける視線を少しずつ手放していく。恋愛の進展は派手な事件ではなく、会話の間、目線、気遣いの積み重ねで描かれ、思春期の心の揺れを繊細に可視化。ギャグの軽快さと心理描写の丁寧さが両立し、巻を追うほど二人の関係が立体的に深まる青春ラブコメ。脇役の距離感や家族描写も丁寧で、単なる甘さだけに寄らない成長物語としてシリーズ全体の完成度を押し上げている。
良い所
- 市川のこじれた内面と山田のまっすぐさが丁寧に噛み合い、関係が進むたびに笑いとときめきの密度が上がる。思春期の距離感を描く精度が非常に高く、共感しやすい。
- 序盤のブラック寄りな独白から、相手を理解していく過程へ自然に移行する構成が見事。成長の段差が小さく積まれるため、全巻を通して感情の連続性が強く、破綻がない。
- ギャグと恋愛の配分が巧みで、重くなりそうな場面でも会話の間で空気をほぐせる。笑えるのに情緒が薄まらず、読後に温かさが残る設計が優れていて、読後感が良い。
- 山田を理想化しすぎず、等身大の不器用さや優しさを具体的な行動で見せる点が良い。主要二人だけでなく周囲の友人関係も物語の厚みを支えており、世界に奥行きがある。
- 作画は表情の揺れを拾うのが上手く、無言のコマでも心情が読める。派手さより積み重ねで魅せる恋愛漫画として完成度が高く、再読時の発見も多くて満足度が高い。
悪い所
- 序盤は主人公の独白比率が高く、陰鬱なテンションが続くため、導入数話で合わないと感じる読者が出やすい。評価が上がるまでに少し助走が必要で、入口の壁は高め。
- 日常の小さな進展を重視する構成なので、劇的な事件や急展開を期待するとテンポが遅く見える。関係の微差を楽しめるかで体感が大きく変わり、好みが分かれやすい。
- ラブコメとしての甘さが増す中盤以降は、初期の毒気や皮肉を好んだ層には物足りなさが残る。作風の柔らかさが好みを分けるポイントになっており、評価差が出やすい。
- 心理描写を細かく追う反面、誤解やすれ違いの解消が穏やかに進む回も多い。強いカタルシスを求める読者には山場の迫力が弱く映る可能性があり、印象に差が出る。
- 人気作ゆえに周辺情報の先入観が入りやすく、期待値が高すぎる状態で読むと平常回を薄く感じることがある。じっくり読む前提で評価が安定しやすく、即効性は控えめ。




