レビュー著者: 漫画よしあし
最終更新日:
雨夜の月 の感想と評価(良いところ、悪いところ)
雨夜の月
マークダウンで表示著者: くずしろ
連載: コミックDAYS
評価: 8.9/10
あらすじ
ピアノレッスンに通う高校生の金田一咲希は、入学直前にぶつかった少女・及川奏音とクラスメイトとして再会する。奏音は耳が不自由であり、その障害ゆえに周囲と距離を置いていた。しかし、咲希は奏音の真っ直ぐな瞳に惹かれ、彼女の世界を知りたいと歩み寄る。手話やメッセージアプリ、そして音楽を通した交流の中で、二人は言葉の壁を超え、目には見えないけれどかけがえのない特別な感情を育んでいく。感音性難聴という繊細なテーマに誠実に向き合い、マイノリティが抱える葛藤と、それを包み込む優しさを圧倒的な透明感で描き出す。くずしろが贈る、静かで、しかし熱く心に深く染み渡る感涙必至のヒューマンドラマ!
良い所
- 奏音ちゃんの孤独に寄り添おうとする咲希ちゃんの真っ直ぐな優しさに何度も涙しました。聴覚障害という難しいテーマを、ここまで誠実かつ繊細に描き切っていることに感動。二人の心の距離が少しずつ縮まる過程が本当に尊いです。
- 手話だけでなくスマホや筆談を交えたリアルな交流描写が素晴らしい。言葉が通じないもどかしさを越えて、目に見えない大切なものを共有していく二人の姿に心が震えました。ピアノの旋律が聞こえてくるような透明感溢れる傑作です。
- 障害を持つ当事者の苦悩だけでなく、寄り添う側の無知や葛藤も逃げずに描いている点に凄く好感が持てました。安易な恋愛関係に逃げず、まずは一人の人間として向き合う姿が美しい。読むたびに優しく、強い気持ちになれる名作です。
- くずしろ先生の描くキャラクターの表情がとにかく豊かで、言葉がなくても感情が痛いほど伝わってきます。静かな空気感の中で進むストーリーにどっぷりと浸ることができ、日々の喧騒を忘れて心が洗われるような読書体験でした。
- 百合漫画としての心理描写が極めてハイレベル。お互いを大切に想うがゆえの遠慮や、踏み込む勇気の描き方が絶妙で、ページをめくる手が止まりませんでした。切なさと温かさが同居した、一生大切に読み返したい宝物のような作品です。
悪い所
- 二人の内面を深く描いているのは分かりますが、物語の進展があまりにもゆっくりで、読んでいて少し焦れったく感じてしまいました。もう少しドラマチックな事件や、二人の関係が大きく変わるような山場が早く欲しかったです。
- 障害や周囲の無理解といった重たいテーマがリアルに描かれるため、全体的に空気が重くて読んでいて精神的に疲れてしまう時がありました。心が元気な時じゃないと、彼女たちの悩みを受け止めるのが少ししんどく感じてしまいます。
- 主人公たちの自己評価が低かったり、周囲に気を使いすぎたりする場面が多くてヤキモキしました。もっと素直に想いをぶつければ解決するのに、と少し冷めてしまう瞬間があり、ストーリーに没入しきれない箇所がありました。
- 百合としての甘さを求めて読み始めると、ヒューマンドラマとしての側面が強すぎて少し物足りなさを感じるかもしれません。社会問題に切り込むような真面目な内容なので、気楽なラブコメを期待している人には不向きな漫画です。
- 登場人物のセリフが文学的で綺麗すぎるせいか、現実の高校生のやり取りとしては少し違和感を覚えることがありました。作品の雰囲気には合っているのですが、もう少し生っぽい、泥臭い人間関係の描写も見てみたかったです。





