レビュー著者: 漫画よしあし
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雨夜の月 の感想と評価(良いところ、悪いところ)

雨夜の月

雨夜の月

著者: くずしろ

連載: コミックDAYS

ジャンル: ヒューマンドラマ青春

評価: 9/10

あらすじ

進学校に通う咲希と、感音性難聴の奏音。すれ違いと戸惑いを重ねながら、互いの世界を知っていく過程を丁寧に描く青春ドラマ。聴こえ方の違いを単なる設定で終わらせず、会話の届き方や沈黙の重みまで繊細に掬い上げる。百合としてのときめきと、人を理解しようとする誠実さが同時に積み重なり、静かな熱を帯びて進んでいく。優しさだけでなく痛みも受け止める、余韻の深い作品。人物同士の距離の変化を追う手触りが非常に繊細で、静けさが痛い。

良い所

  • 聴覚障害の描写が表層的でなく、日常の小さな不便や不安まで丁寧に描かれていました。読みながら何度もハッとさせられる作品です。描写の誠実さに何度も姿勢を正されました。
  • 咲希と奏音の距離が少しずつ縮む過程が繊細で、静かな場面ほど胸に沁みました。派手さはないのに感情の波がしっかり伝わってきます。静かな会話の熱量で涙がにじむ場面が多いです。
  • 何気ない言葉のやり取りに重みがあり、優しい場面ほど涙腺にきました。読後に心が温まるだけでなく、自分の視野も広がる感覚があります。小さな言葉の重みを丁寧に受け取れました。
  • 表情の描き方がとても上手く、気まずさやときめきが嘘なく伝わります。間の取り方が巧みで、静かな会話劇としてずっと見ていたくなります。視線と沈黙だけで伝える力が抜群に高いです。
  • 恋愛としても人間ドラマとしても成立していて、読者に考える余白を残すのが魅力です。読み終わったあと誰かに薦めたくなる一冊でした。読後に人との接し方を見直したくなりました。

悪い所

  • 丁寧に描くぶん展開はかなりゆっくりで、強い事件性を求める人には物足りないと思います。テンポ重視で読むと合いにくいかもしれません。強い起伏を求める読者には遅く映りそうです。
  • 恋愛と障害描写の両方を扱うため、どちらかだけを求める読者には焦点がぼやけて見える場面がありました。好みを選ぶ構成だと感じます。どちらを主軸に読むかで評価が割れそうです。
  • 当事者目線で読むと創作的な脚色が気になる箇所もあり、素直に浸れない回がありました。繊細な題材だけに受け取り方が難しいです。題材の繊細さゆえ評価が難しい章もあります。
  • 咲希の迷いが長く続く章では感情の停滞を強く感じました。もう少し早いタイミングで変化が見えると、さらに読みやすかったと思います。停滞が長い章では没入が揺らぐ瞬間がありました。
  • 会話劇の魅力は大きい反面、まとめ読みすると起伏が小さく感じる巻もありました。少し間を空けて読むほうが合うタイプの作品です。一気読みより間を空ける方が相性が良いです。

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