レビュー著者: 漫画よしあし
最終更新日:
MASTERキートン の感想と評価(良いところ、悪いところ)

MASTERキートン
マークダウンで表示連載: ビッグコミックオリジナル
評価: 9/10
あらすじ
オックスフォード大卒の考古学者でありながら、元SAS(英国特殊空挺部隊)のサバイバル教官という異例の経歴を持つロイズの保険調査員(オプ)、平賀=キートン・太一。普段は温厚でうだつの上がらない生活を送る不器用な男だが、一度依頼を受ければ、世界中の歴史的難事件や陰謀の渦中に飛び込んでいく。浦沢直樹が描く超精密で映画的な作画と、冷戦終結期のヨーロッパを舞台にした重厚な国際サスペンス。砂やチョコレート、針金など手近な物でトラップを作り窮地を脱するSAS仕込みのサバイバル技術と、深い歴史・考古学のロマン。どんな冷酷な事件の裏にも温かい人情と哀愁を描く、知的好奇心を極限まで刺激する人間讃歌の金字塔!
良い所
- 考古学の歴史ロマンと冷戦期の国際的な軍事サスペンスが融合した、卓越した知的好奇心を刺激するストーリーが本当に面白い。1話完結の完成度がどれも映画のように高く、大人向けの最高の漫画だ。
- 普段はうだつの上がらない不器用な父親なのに、窮地に陥ると元SASとしての驚異的なサバイバル技術で解決するキートンのギャップがたまらなく格好いい。彼の優しさと不器用さに深く心惹かれた。
- 浦沢直樹先生による、ヨーロッパの石造りの街並みや砂漠といった超精密で美しい背景と映画的な作画が素晴らしい。キャラクターの絶妙な表情の機微が素晴らしく、ページを捲るだけで深く引き込まれる。
- ただのサスペンスに留まらず、厳しい現実の裏にある家族の絆や、胸を打つ温かい極上の人情劇が本当に大好きだ。人間への深い愛情と哀愁を肯定する手塚治虫的な優しさに、私自身何度も深く涙した。
- 世界各地の歴史的遺跡や民俗学の蘊蓄が豊富で、読むだけで知的教養が身につく楽しさがある。キートンが夢を追いかける考古学者としての情熱を失わない姿に、私自身日々の生活を大切にしたくなった。
悪い所
- 1980年代末〜1990年代初頭の連載なため、冷戦期のやや古臭い世界情勢や政治ネタが多くて若い世代には理解しづらい。当時の歴史的な知識がないと事件の背景が分かりにくく、少し退屈に感じた。
- 基本的に一話完結形式なので、中盤以降は事件解決のパターンが固定化し、お話の流れがご都合主義なマンネリに感じた。もう少し全体のストーリーの大きな進行やドラマチックな関係変化が欲しい。
- 手近なチョコレートや砂、針金だけでプロの傭兵や軍人を完璧に退治してしまう、一部の非現実的すぎるサバイバル技術に冷めてしまった。ご都合主義な罠が多いため、リアルな軍事サスペンスを好む私には違う。
- 原作者と浦沢先生側の権利関係のトラブルによる絶版騒動など、作品の裏での複雑な大人の事情にどこかモヤモヤした。現在は無事に完全版として読めるが、著作者表記の変遷等に少し悲しい気持ちになってしまう。
- キートンの自己評価が常に低く、娘や元妻、周囲に対しても不器用すぎて、主人公のウジウジした優柔不断さを見ていて少々もやもやさせられた。もう少し父親としてビシッと行動してほしいと思う場面が多かった。
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