レビュー著者: 漫画よしあし
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軍鶏 の感想と評価(良いところ、悪いところ)
良い所
- 成嶋亮という、救いようのない悪党でありながら、強烈に人を惹きつける主人公。彼の泥水をすするような生き様と、暗闇の中で輝く空手の美しさに、気づけば全神経を集中して読み耽っていました。これこそが本物のアウトローです。
- たなか亜希夫先生の圧倒的な画力で描かれる格闘シーンの緊張感は、他の格闘漫画とは一線を画しています!打撃の重さや、骨が砕ける感触さえも伝わってくるような生々しい描写に、読んでいて本気で息が止まりました。
- 「空手だけが、自分を人間として繋ぎ止めている」という亮の孤独に、震えるほどの共感と恐怖を覚えました。少年院編の、あの黒川との稽古のシーン。あれほどまでに純粋で残酷な「教育」の描写は、漫画史に残る傑作。
- 格闘技の技術論をベースにしながらも、最後は「殺し合い」にまで昇華されるバトルの凄み。綺麗事一切なしの、生き残った者が正義という冷徹な世界観が、自分の甘い考えを粉々に打ち砕いてくれたような気がします。
- 物語全体に漂う、死の香りと生の執着のコントラストが本当に美しい。亮がどれほど堕ちていっても、彼が空手を振るう瞬間にだけ宿る「神聖さ」のようなもの。その唯一無二の雰囲気に、最後まで魅了され続けました。
悪い所
- 物語の後半、制作側のトラブルの影響か展開が唐突になったり設定がブレたりしたのが、本当に、本当に勿体なかったです。序盤のあの完璧な熱量が最後まで持続していれば、間違いなく最高得点の傑作だったのに。
- 主人公・亮の行動があまりに残虐で身勝手なため、一般的な道徳観を持っている人には、嫌悪感しか抱けない可能性があります。レイプや殺人を肯定はしていませんが、そうした描写が平然と続くので、人を選びます。
- 結末が非常にあっさりというか、投げ出したようにも見える終わり方だったので、それまでの壮絶な闘いを見届けてきたファンとしては、大きな消化不良感を味わいました。軍鶏らしいといえばそうですが、寂しい決着。
- 中盤の「リーサルファイト編」などの引き伸ばし感に、少し物語の焦点がボヤけてしまった時期がありました。格闘シーンは相変わらず凄いのですが、ストーリーとしての深みが一時的に薄れたのが少し残念でした。
- 画面全体が非常にダークで重苦しいので、読み終わった後にかなりの精神的疲労を伴います。元気な時に読まないと、こちら側のエネルギーまで亮に吸い取られてしまうような、それほどまでに強い毒気を持つ作品です。





