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軍鶏 の感想と評価(良いところ、悪いところ)

軍鶏

軍鶏

著者: たなか亜希夫橋本以蔵

連載: 漫画アクション/イブニング

ジャンル: 青年漫画ドラマバイオレンス格闘

評価: 7.2/10

あらすじ

『軍鶏』は、名門高校に通う優等生・成嶋亮が、両親殺害という衝撃的な事件を起こしたことを発端に、暴力と孤独の只中へ堕ちていく姿を描いた青年向け格闘ドラマです。少年院での苛烈ないじめを生き延びるため、亮は空手家・黒川健児のもとで格闘技を身につけ、やがて地下格闘技や異種格闘技戦の世界へ足を踏み入れていきます。圧倒的な画力で描かれる試合の迫力、光と闇を背負ったライバル・トーマとの対比、そして暴力の果てに何を掴もうとするのか――救いのない世界を舞台に、人間の業と生への執着を鋭くえぐり出す作品です。

良い所

  • 少年院編からリーサルファイト編までの緊張感が圧倒的で、一度読み始めると止まらないほど引き込まれました。暴力描写は苛烈なのに、画面構成が巧みで目を離せない迫力があります。亮の心の闇が格闘を通して露わになっていく過程が生々しく、物語としても格闘漫画としても強烈でした。
  • 主人公が決して更生しない点に魅力を感じました。親殺しから始まり、人を傷つけ続けるのに、それでもどこか目が離せない存在感があります。トーマとの対比で光と闇の生き方が際立ち、勧善懲悪では語れない深みがありました。人間の業を真正面から描いているところが刺さります。
  • 試合シーンの“重さ”が他の格闘漫画とは一線を画していて、殴る瞬間の骨の軋みまで伝わるような描写に圧倒されました。命を賭けた闘いの異常さを、日常描写との対比で際立たせる演出も巧みで、ページをめくるたびに緊張が走ります。
  • 社会風刺的なテーマが随所に織り込まれていて、単なるバイオレンス漫画に留まらない深さがあります。家庭環境や教育、格差といった問題が極端な形で描かれ、読んでいて胸がざわつくほどのリアリティがありました。読み終えたあとも考えさせられる作品です。
  • 菅原との対決までの流れは格闘漫画の中でも屈指の完成度だと感じました。亮の狂気と人間らしさが絶妙なバランスで描かれ、読後の余韻が強く残ります。救いがないのに嫌いになれない主人公像が印象的で、強烈な読書体験になりました。

悪い所

  • 中国編以降の展開が失速した印象で、悟りのようなテーマに寄っていくものの掘り下げが浅く、前半の鬼気迫る暴力性とのギャップが大きく感じました。異種格闘技戦の盛り上がりも弱く、期待ほど熱くなれませんでした。
  • 主人公の倫理観が完全に崩壊しているため、読み進めるのがしんどくなる場面が多かったです。暴力や性描写が繰り返されるのに、その結果への掘り下げが薄く、不快感だけが残るコマもありました。かなり読む人を選ぶ作品だと思います。
  • 雑誌移籍後の展開にぶつ切り感があり、キャラクターの強さや立ち位置が急に変わったように見えました。亮の存在感が弱まり、前半で築かれた怪物性が薄れてしまったのが残念です。物語全体のトーンもブレているように感じました。
  • ラストの締め方が自分には合いませんでした。主人公が救われない結末は理解できるものの、そこに至るまでの積み重ねが弱く、納得感の薄い終幕に感じました。重い物語を読んできただけに、もう少し説得力のある結末を期待していました。
  • 暴力や性のショック描写が前面に出すぎて、ストーリーよりも刺激が優先されているように感じる場面がありました。インパクトはあるものの、繰り返されるうちに慣れてしまい、緊張感が薄れるところもあります。格闘技の駆け引きにもっと比重を置いてほしかったです。

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