レビュー著者: 漫画よしあし
最終更新日:
シグルイ の感想と評価(良いところ、悪いところ)
良い所
- 「死狂い」となった武士たちの狂気の美学を、山口貴由先生の圧倒的な画力で描き出した衝撃作です!一コマ一コマが濃密で、ページをめくるたびに立ち昇る血と執念の匂いに、心底痺れるような恐怖と感動を覚えました。
- 藤木と伊良子の対照的な因縁劇が、15巻かけてじっくりと煮詰められていく構成に脱帽しました。言葉は少ないのに、視線一つ、筋肉の震え一つで全てを語る演出が凄まじく、読後の疲労感すら心地よい傑作です。
- 人体の構造を徹底的に描き込んだ残酷な破壊描写に、目を背けたいのに目が離せない「魔力」を感じました。単なるグロではなく、命を削り合う剣術の凄みを表現するための必然としての残酷さに、美学を感じます。
- 独特のナレーションと言葉選びのセンスが、作品の世界観を孤高の高みへと押し上げています。「残酷無惨時代劇」というジャンルを確立した、作者の狂気的なこだわりが隅々まで行き渡っていて、圧倒されました。
- 虎眼流の秘剣や剣術の理屈が、シュールかつ論理的に描かれていて面白すぎます。人間が怪物へと変貌していく修練の過程が、山口先生独自の解釈で「現実の脅威」として描かれており、知的興奮を絶えず味わえました。
悪い所
- 血肉や内臓、身体欠損といった描写が常軌を逸したレベルで残酷なため、生理的な拒絶反応が出てしまい、最後まで読むのに相当な精神力を要しました。万人に勧められる作品ではなく、完全に「人を選ぶ」劇薬です。
- 武士道の狂気や歪んだ愛憎の描写が、自分にはあまりに不気味で理解を超えており、共感どころか嫌悪感を抱く瞬間が正直ありました。キャラクター全員が常軌を逸しているため、感情の置き所に困り、少し覚めた。
- 第一話の「御前試合」に向かうまでの過去編が非常に長く、いつ試合が始まるのかとじれったく思う時期がありました。因縁の深掘りは大切ですが、テンポを重視する読者には少し停滞気味に感じられるかもしれません。
- あまりに強烈なビジュアルと独特の文体が、たまにギャグに見えてしまうほどシュールで、シリアスなシーンで笑いそうになってしまうことがありました。没入したいのに、その独特のクセが邪魔をする瞬間があり惜しい。
- 原作小説からの大胆な脚色が、山口先生の個性が強すぎて、別物のように感じられる箇所がありました。原作の乾いた質感を期待して読むと、あまりのコッテリした「山口節」の濃さに胃もたれする読者もいそうです。




