レビュー著者: 漫画よしあし
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NHKにようこそ! の感想と評価(良いところ、悪いところ)
良い所
- ひきこもりの内面にある自意識の暴走と、逃げ場のない焦燥感が、あまりにリアルに描かれていて、読んでいて自分の古傷を抉られるような激痛を感じました。でも、それが不思議と救いにもなる、稀有な作品です。
- 大岩先生のキャラクターの「狂気」や「絶望」を視覚化する画力が凄まじいです!特に岬ちゃんの、清純さと闇が同居した表情には、佐藤と一緒に自分も完全に翻弄され、依存してしまうような危うい魅力を感じました。
- ダメ人間たちが足掻いて、失敗して、さらに転落していく中にある「嘘のないドラマ」に、本気で心を打たれました。かっこいい奇跡は起きないけれど、それでも生きていくしかないという結末には、静かな勇気をもらえます。
- 2000年代初頭のオタク文化やネットの空気感が完璧にパッケージされていて、当時の熱狂と虚無を思い出して胸が熱くなりました。エロゲ制作やオフ会など、あの時代のリアルな「痛さ」が愛おしくて堪りません。
- 「陰謀論」を盾に自分の惨めさから目を逸らそうとする心理描写は、もはや現代人の抱える孤独の正体を突いている気がします。バカバカしいギャグの中に、鋭すぎる社会への洞察が光る、まさに「ひきこもり文学」の傑作です。
悪い所
- 物語のトーンが終始一貫して鬱屈としているため、精神的に落ち込んでいる時に読むと、本気で気分が沈み込んで立ち直れなくなる可能性があります。エンタメとしての楽しさを求めている人には、毒が強すぎるかもしれません。
- 主人公・佐藤が最後までほとんど成長しない、あるいはまたすぐにダメになる展開に、読んでいて猛烈にイライラしてしまうことがありました。「もっとしっかりしろ!」と背中を蹴りたくなるような、もどかしさの連続です。
- 岬ちゃんの正体や目的を巡るサスペンス的な解決を期待しすぎると、少し肩透かしを食らってしまうかもしれません。あくまで「救済」という名の共依存を描く物語なので、スッキリした謎解きを求める作品ではないです。
- 20年以上前の価値観やオタク用語が中心なので、今の若い読者には当時のノリが少し古臭く、理解しにくい場面があるかもしれません。時代の記録としては優秀ですが、少し敷居を感じる可能性も。
- 性的、あるいは倫理的にかなりきわどい描写やセリフが含まれるため、不快感を抱く人がいるかもしれません。クズのリアルを追求した結果ですが、万人受けする内容ではないことを承知の上で読むべきです。





