レビュー著者: 漫画よしあし
最終更新日:
BECK の感想と評価(良いところ、悪いところ)
良い所
- 「音が聞こえてくる」と錯覚するほどのライブシーンの描き込みに、全身の毛穴が沸き立つような興奮を覚えました。歌詞を描かず、観客の反応とキャラの表情だけで「凄い演奏」を表現する手法は、正に発明です。
- 平凡なコユキがギター一本で世界を変えていく王道の成長物語に、中学生の頃の自分は完全に心を射抜かれました。楽器を触ったことがない自分ですら、フェンダーのテレキャスターを本気で欲しくなったほどです。
- 竜介や千葉、平といったメンバー一人ひとりの「居場所」がバンドの中に確立されていく過程が熱いです。不器用な奴らが集まって、音で繋がる。そんなバンドのDIY精神やライブハウスの空気感が完璧に再現されています。
- 洋楽の名盤ジャケットをオマージュした扉絵のセンスに、作者の深い音楽愛を感じてニヤリとしました。物語の節々に散りばめられた音楽ネタを探すのも楽しく、自分の音楽の趣味を広げてくれた大切な教科書です。
- グレイトフルサウンドという架空のフェスで伝説を作るエピソードは、漫画史に残る傑作回だと思います。雨の中で響く音、静まり返る会場、および伝説の瞬間。あの興奮と感動は、何度読み返しても鳥肌が立ちます。
悪い所
- 物語の終盤、恋愛要素の着地点や解釈が少しぼんやりしていて、個人的には物足りなさを感じました。音楽としての完結は素晴らしいのですが、真帆との関係をもっとはっきり描き切ってほしかったなという本音も。
- ライブ中の観客の驚き顔やリアクションが少しパターン化していて、中盤以降は予定調和に感じてしまうことがありました。演奏が凄いのは伝わりますが、周囲の反応に頼りすぎているように見えて、少し覚めました。
- 作中の英語表現や、海外ロックスターの人物描写に少しステレオタイプな違和感を覚えることがありました。洋楽への憧れが強いのは分かりますが、たまに鼻につくようなエリート意識を感じて、素直に乗り切れない。
- コユキの才能が「選ばれし者」すぎて、後半は少し共感が難しくなる瞬間がありました。最初は普通の子だったのに、気づけば手の届かない存在になってしまい、初期の泥臭い練習風景が恋しくなってしまった。
- ライバルバンドとの抗争や、裏社会が絡む展開が少し長引いて、純粋な音楽シーンをもっと見たいのになと、じれったく思う回がありました。物語のフックとしては必要ですが、少し話が逸れすぎた印象を抱きました。




