レビュー著者: 漫画よしあし
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大奥 の感想と評価(良いところ、悪いところ)
良い所
- 「赤面疱瘡」という一つのIF設定が江戸の全てを論理的に塗り替えていく緻密さに圧倒されました。なぜ史実通りの結末に至るのかをこの設定で説明しきる構成力は本当に凄まじく、唸るしかなかったです。
- 男女の役割を入れ替えることで現実のジェンダー観や家制度の矛盾が浮かび上がるのが鋭くて痛い。登場人物たちが知的で言葉に重みがあるため、政治的な台詞のやり取りを読むだけで体が熱くなります。
- 各時代の将軍と大奥のドラマがどれも独立した人間ドラマとして完結しているのが素晴らしいです。どの時代から読んでも感動しますが、通して読んだ時の積み重ねが作る圧倒的な感動は格別でした。
- 史実に向かって収束していく必然性の描き方が鮮やかです。完結後に出発点を思い返すと、よしながふみ先生の構想の壮大さに改めて唸りました。これだけの物語を描き切った胆力が信じられません。
- 敵役にすら共感させてしまう人物造形の深さに、何度も読み返したくなります。権力の歯車に巻き込まれながらも懸命に生きる全キャラクターに血が通っていて、誰の視点で読んでも感情移入できます。
悪い所
- 世代交代が激しく登場人物が非常に多いため、誰が誰なのか把握するのに時間がかかります。特に似た名前の人物が出てくる時代は、家系図を片手に読まないと混乱したまま終わってしまいました。
- 月代姿のキャラクターが多く視覚的に見分けにくいのが難点です。少女漫画的な華やかさを期待すると戸惑うはずで、キャラクターを判別できるようになるまでに少し時間がかかりました。
- 権力争いや救いのない悲劇的な展開が多く、気持ちを整えてから読まないとかなり重たく響きます。特定のエピソードは読み終わった後しばらく気持ちを引きずって、次に進めなくなりました。
- 文語調に近い台詞回しが多く、慣れるまでセリフの読み取りに時間がかかりました。時代劇らしい重厚感を生んでいるのは分かりますが、最初の数巻が現代口語に慣れた読者にはハードルになります。
- 1エピソードの密度が非常に高く、「ゆっくり読みたい」と「続きが気になる」がせめぎ合います。消化しきれないまま次の時代に進んでしまう感覚があって、一気読みには向いていない作品だと感じました。




