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最終更新日:

昭和元禄落語心中 の感想と評価(良いところ、悪いところ)

昭和元禄落語心中

昭和元禄落語心中

完結
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著者: 雲田はるこ

連載: ITAN

ジャンル: 落語人間ドラマ時代劇

評価: 9.6/10

あらすじ

刑務所の慰問会で聴いた八代目有楽亭八雲の『死神』に衝撃を受け、出所後に弟子入りを志願した元チンピラの与太郎。弟子を一切取らないはずの八雲が、何の気まぐれか彼を受け入れたことから物語は動き出す。与太郎の破天荒ながら純粋な高座、そして八雲と同居する助六の遺児・小夏との出会い。やがて明かされるのは、夭逝した伝説の天才落語家・二代目有楽亭助六と、彼の影を追いながら一人落語界に君臨する八雲(菊比古)の、戦前から昭和、平成へと続く知られざる愛憎と因縁の物語。落語という『滅びの美学』に魅せられ、芸と心中しようとする噺家たちのあまりに美しく、凄絶な生き様を描いた人間ドラマの絶対的最高峰!

読む前に確認したい相性

向いている人

  • 落語を知らなくても、芸に人生を賭ける噺家たちの生き様と昭和の退廃美に引き込まれる人
  • 対照的な才能を持つ二人の友情・愛憎と、昭和から平成へと続く世代を超えた人間ドラマに感動できる人
  • 圧倒的な演出力で「落語の面白さ」が視覚的に伝わる読書体験を通じ、実際の寄席に行きたくなる人

向いていない人

  • 落語の歴史・演目の前提知識がなく、序盤の渋く専門的な雰囲気に入り込むのが難しい人
  • 過去編の男女の愛憎や悲劇・心中への展開が重苦しく、精神的に削られてしまう人
  • 少女漫画・BLライクな耽美な作画が合わず、劇画調のリアルな人物描写を求める人

良い感想・レビュー

  1. 俺、八雲(菊比古)が雪の降る寄席で一人寂しく『死神』を演じる、あの圧倒的な妖艶さと凄みのある高座シーンに魂を射抜かれた。落語を詳しく知らなくても、言葉のキレと絵の力だけでその凄さがダイレクトに脳に伝わってくる。
  2. 菊比古と助六という、「テメエの居場所を作るために己を磨く静の落語」と「大衆のためにすべてをさらけ出す動の落語」の対比が見事すぎる。正反対の二人がお互いの才能を誰よりも認め合い、高め合っていた友情が切なすぎて胸が震える。
  3. 落語をただの伝統芸能として美化せず、「昭和の終焉と共に滅びゆく芸と心中しようとする八雲の、業の深さと退廃美」を徹底的に描き切ったストーリーテリングが素晴らしい。これほど重厚で美しい文学のような読書体験は他にない。
  4. 与太郎の天真爛漫な明るさに何度も救われた。暗い因縁に縛られて冷え切った八雲と小夏の心を、与太郎が圧倒的な太陽のような落語で温め、再生させていくプロセスが最高に温かくて、何度も涙がこぼれた。
  5. 山崎育三郎さんらによる大ヒットミュージカルの感動冷めやらぬまま、全5巻で一気読みできる美麗な新装版で最後まで駆け抜けた。これだけ濃厚で狂おしい愛憎劇を、一切の妥協なく畳み切ったラストの余韻が本当に素晴らしすぎる。

悪い感想・レビュー

  1. 落語というテーマ自体が非常に渋いため、寄席の歴史や演目の前提知識、独特の江戸弁の言い回しに慣れるまで、私は少し敷居が高く感じてしまった。古典芸能に全く興味がないと、序盤は物語に入り込むのが少し大変かも。
  2. 過去編(八雲と助六篇)のみよ吉を巡るドロドロとした男女の愛憎や、裏切り、心中へと突き進む悲劇的な暗さが、読んでいて精神的にかなり削られた。もっと与太郎放浪篇のような、明るくて爽快な落語コメディを求めていた。
  3. 後半の昭和の終わりから平成にかけて、落語そのものの衰退や登場人物たちの老い(肉体の衰え、声が出なくなる絶望)が生々しく描かれすぎて、時の流れの残酷さにどんよりと胸が締め付けられ、寂しい気持ちになる。
  4. 雲田先生の描く少し耽美的で細身の、女性向け・BLライクな美男子の作画タッチが、硬派な昭和の劇画やリアルなオジサン描写を期待している僕には、少し綺麗に整いすぎていて好みが分かれる部分があった。
  5. 最後にある小夏の子供(信之助)の『本当の父親』に関する、真実をうやむやにしたようなミステリアスな含みを持たせた決着に、俺は少しモヤモヤした。すべての伏線を完全にスッキリ白黒つけたい人には消化不良が残る。

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