レビュー著者: 漫画よしあし
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望郷太郎 の感想と評価(良いところ、悪いところ)
良い所
- 「経済の起源」をこれほどまでにスリリングに描き出す手腕に脱帽しました。石を貨幣にし、利息の概念を持ち込むことで社会が激変していく過程に、知的な興奮が止まらなくなります。正に大人のための教科書です。
- 山田芳裕先生特有の、キャラクターの魂が震えるような表情に圧倒されます。極限状態での太郎の絶望や歓喜が、あの独特の筆致で描かれることで、こちらの心にダイレクトに衝撃が突き刺さってきました。
- ただのサバイバルではなく、「人間は文明を失っても人間でいられるか」という重厚な問いが芯に通っています。太郎が知恵と熱意で新たな部族をまとめ上げ、文明を再編していく姿に、人間賛歌の真髄を見ました。
- マー、パルといった仲間たちの成長と絆が非常に丁寧に描かれていて、旅の過程で彼らに深く愛着が湧きました。言葉も文化も違う彼らが、経済という共通言語を通じて繋がっていくドラマに何度も感動しました。
- 文明崩壊後の風景や道具の考証が非常に緻密で、その世界に本当に行ってきたかのようなリアリティがあります。架空の社会構造や宗教観の作り込みが凄まじく、山田先生の構築力の高さにただただ唸るばかりです。
悪い所
- 物語のテンポが非常にゆっくりで重厚なため、派手なアクションやスピーディーな展開を求めていると、肩透かしを食らうかもしれません。経済や政治の議論が続く回は、集中力を持って読み込まないとしんどいです。
- 独特の「顔芸」とも言える強烈なキャラクター描写は、好みがはっきり分かれると思います。自分も最初はあの濃すぎる絵柄に抵抗があり、ストーリーの面白さに気づくまで少し時間がかかってしまいました。
- 500年後の世界にしては、現世の知識が役に立ちすぎるというか、太郎が賢明すぎて少し予定調和に感じる場面がありました。もっと彼が現代人ゆえの致命的なミスを犯すような危うさも見たかったです。
- 太郎の家族への想いが、時折物語を停滞させているように感じることもありました。故郷を目指すという動機は分かりますが、今の過酷な現実をもっと泥臭く生き抜く姿にフォーカスしてほしいと思う瞬間も。
- 非常に長大になりそうな気配があり、完結までこのテンションを維持できるのか、途中で失速しないかという不安が常にあります。山田先生の過去作を思うと、ラストの着地点がどうなるか気が気ではありません。




