一手にしびれる!10巻以上の将棋・囲碁漫画8選【本格派から青春ラブコメまで】
盤をはさんで向かい合い、駒や石を置く。ただそれだけの場面から、どうしてあれほどの熱が立ちのぼるのか。将棋・囲碁の漫画は、一手の裏にある焦りや欲や祈りを、まるごと引きずり出してきます。
ここに集めたのは、10巻以上まで積み上がった8作品。ルールを知らないまま読める入口の広いものから、監修つきで棋譜に踏み込む本格派、盤の前で人が壊れていく劇画、将棋部を舞台にした甘いラブコメまで揃えました。強くなりたいという願いだけは、どれにも同じ形で流れています。
私が将棋の駒の動かし方を覚えたのも、この中の一冊がきっかけでした。読み終えたころには、そういう気分になっているかもしれません。
時間がない人向け結論:おすすめTOP3
選び方のポイント
1. 本格派か、人と人のドラマか
同じ題材でも、盤の上をどこまで描くかで読み心地はまるで変わります。監修つきで棋譜や戦術に踏み込む作品は、指し手の意味がわかるほど面白くなる。逆に盤面の説明をほとんど省いて、勝負師の生き様や人の縁のほうへ振り切った作品もあります。将棋も囲碁も知らないなら、後者から入ったほうが挫折しにくいです。
2. 読み切るか、続きを待つか
8作品のうち5作品は最終回まで出ています。休みの日に一気に読み通してすっきりしたいなら、こちらから。残りの3作品はいまも続いていて、結末はまだ誰にもわかりません。待つ時間ごと楽しめるタイプなら、連載中のほうが向いています。
3. 熱量の高さをどこまで許せるか
盤の前で吐血したり精神が壊れたりする劇画もあれば、猫が横で鳴いている柔らかな話もあります。前者は開くだけで体力を持っていかれるぶん、当たったときの手応えが桁違い。寝る前に少しずつ読みたいなら、日常の温度に近い作品のほうが落ち着いて向き合えます。
4. 主人公がどの世界に立っているか
プロを目指して階段を上る話、賭け将棋に潜り込む話、女流の世界で頂点を狙う話、部活の盤をはさんで恋をする話。立ち位置が変わるだけで、物語の温度はまったく別物になります。自分がどの世界に入り込みたいか先に決めておくと、8作品から迷わず一冊を選べます。
全8作品の比較表
ヒカルの碁
完結碁盤に宿った平安の幽霊と出会った少年が、自分の一手を見つけるまでの物語

- 作者
- ほったゆみ/小畑健/梅沢由香里
- 掲載誌
- 週刊少年ジャンプ
- ジャンル
- 少年マンガ/囲碁/ヒューマンドラマ/青春
- 完結
- 完結
- 評価
- 9.5/10
良い点
囲碁の決まりごとを何も知らないまま開いても、対局の場面になると引き込まれます。普通の中学生と碁の名家に育った少年が追って追われてを繰り返す関係が熱い。言葉で説明しすぎず、絵だけで盤の張りつめ方を伝えてくるのもうまいです。
気になる点
佐為の消え方があまりに寂しく、きちんとした別れの場面がないまま話が先へ進みます。終盤は急いで幕を下ろした運びが抜けきらず、思い描いた決着に届かないまま終わります。碁をかじった人には、打たれる手が教科書どおりに見えるところも物足りません。
こんな人におすすめ
囲碁の決まりごとを一つも知らないまま、打ち手の本気だけで引っぱられたい人に向きます。未熟な少年が挫折を挟んで一人前になるまでの長い道のりを、じっくり追いかけたい人にもおすすめ。
こんな人には不向き
最終回まできれいに着地する物語を求めていると、駆け足に見える幕引きが引っかかります。好きな登場人物が途中で退場する展開が苦手な人も、読み終えたあとしばらく引きずるはず。
ハチワンダイバー
完結メイド姿の棋士に敗れた男が、賭け将棋の世界で再起を図る。将棋盤の深淵に潜り、魂を削って戦う超熱血将棋アクション!

- 作者
- 柴田ヨクサル
- 掲載誌
- 週刊ヤングジャンプ
- ジャンル
- 将棋/青春/ギャンブル/アクション
- 完結
- 完結
- 評価
- 9.3/10
良い点
盤の前で精神の限界を超えて深みへ潜るという戦い方が凄まじく、一手指すごとに世界が崩れていくような迫力があります。どん底に落ちた菅田が仲間と這い上がっていく筋立ては、少年漫画の王道そのものです。常軌を逸した強さと哲学を持つライバルたちも忘れられません。
気になる点
勢いと熱量で押し切る画風は個性が強く、端正な絵や静かな対局を好む人には画面がうるさく映ります。後半は勝負を超えた破壊や超常現象に近い描写が増え、初期のヒリヒリした駆け引きが好きだった人ほど戸惑います。対局の解説も初心者には難しく、登場人物のテンションが高いぶん読む側の体力も要ります。
こんな人におすすめ
精神の限界を超えて盤の深みに潜るような、命懸けの勝負が好きな人向け。どん底から這い上がる主人公を追いかけて、読み終えたあとに清々しさが残る長編を探している人にも刺さります。
こんな人には不向き
個性の強い絵柄と高いテンションが続くと疲れてしまう人には重いです。将棋を始めたばかりで解説を丁寧に追いたい人も、置いていかれる場面が出てきます。
永世乙女の戦い方
盤上の81マスに命を懸ける女流棋士たち!獰猛な乙女たちの執念を描く本格将棋ドラマ!

- 作者
- くずしろ/香川愛生
- 掲載誌
- ビッグコミックスペリオール
- ジャンル
- 将棋/人間ドラマ/日常
- 完結
- 連載中
- 評価
- 9.1/10
良い点
普段は穏やかな少女たちが、対局に入った瞬間に獲物を狙う獣へ変わります。盤の81マスで魂を殴り合うような執念が伝わってきて、香川愛生女流四段の監修による棋譜と読み合いの解説にも重みがあります。プロ棋士との埋めがたい実力差や制度の限界を、美化せず描くところも誠実です。
気になる点
戦術も詰み手順も本格的なぶん、居飛車や振り飛車といった言葉を知らないと局面の有利不利をつかみにくいです。回想や心理をじっくり描くので一局が決まるまでの進みがとても遅く、女流とプロの格差が重苦しく響く場面も続きます。登場人物の目が笑っていない表情に、最後まで馴染めない人もいます。
こんな人におすすめ
穏やかな少女が盤の前で豹変する、執念のぶつかり合いに痺れたい人に向きます。実在の対局を思わせる細かな棋譜と、理屈で語られる読み合いを味わいたい人にもぴったり。
こんな人には不向き
ルールの土台がないまま局面の有利不利まで直感でつかみたい人には、少し難しい作りです。重苦しい現実や悲壮感より、明るく前向きな勝負ものを読みたい人にも向きません。
3月のライオン
孤独な天才プロ棋士が将棋と人の温もりを通じて再生していく感動のヒューマンドラマ!
- 作者
- 羽海野チカ
- 掲載誌
- ヤングアニマル
- ジャンル
- 将棋/ヒューマンドラマ/日常系
- 完結
- 連載中
- 評価
- 9/10
良い点
重くなりがちな話の横に猫たちの鳴き声が差し込まれ、柔らかい絵が全体の空気をほぐしてくれます。将棋を知らないまま読んでも対局の流れは伝わり、途中の解説も丁寧です。人の温かさに触れて当たり前の感情を取り戻していく桐山零の歩みが、嬉しくもあり切なくもありました。
気になる点
話が進むほど川本家のまわりに比重が寄って、将棋に悩む零の姿が見えにくくなる時期があります。対局の場面を目当てにしていると、色恋の比重が増える中盤以降で物足りなさが出ます。刊行の間隔も空くので、次の展開を待ちくたびれてしまうのが正直つらいところです。
こんな人におすすめ
ルールを知らなくても、対局に懸ける緊張と勝負の重みから物語に入りたい人に向きます。孤独を抱えた主人公が人との縁で少しずつ立ち直る姿に、心を動かされたい人にもおすすめ。
こんな人には不向き
対局の駆け引きだけを途切れず追いたい人には、日常の場面が長く感じられます。主人公以外の背景や群像劇への寄り道を避けたい人にも向きません。
月下の棋士
完結型破りな天才少年が命を懸けて将棋界の頂点に挑む、圧倒的迫力の人間ドラマ!

- 作者
- 能條純一
- 掲載誌
- 週刊ビッグコミックスピリッツ
- ジャンル
- 将棋/ヒューマンドラマ/勝負事/青年マンガ
- 完結
- 完結
- 評価
- 8.8/10
良い点
将棋のルールを知らなくても入っていけます。棋士がひとりひとり壮絶な人生と業を背負って盤に向かってくるので、勝負のたびに背筋が伸びました。能條純一の鋭い線と鬼気迫る表情が静かなゲームを動かし、光る駒や巨大な対局時計といった映画のような見せ方にも唸らされます。
気になる点
対局中の吐血や失禁といった過剰な劇画の演出が続くので、受け付けるかどうかで評価がまっぷたつに割れます。盤面そのものの描写はほとんどなく、手順や戦術を追いたい人には物足りません。中盤からは相手が勝手に崩れていく形が繰り返され、主人公の無礼な振る舞いも最後まで変わりません。
こんな人におすすめ
一手に命と魂を削る、すさまじい熱量の人間ドラマに浸りたい人に向きます。将棋を知らなくても、力強い絵と勝負師の凄みある表情だけで引っぱられたい人なら満足できるはず。
こんな人には不向き
吐血や失神まで起こる誇張された演出より、現実に近い駆け引きを楽しみたい人には合いません。追い詰められる重苦しい展開が続くとしんどくなる人も、避けたほうが無難です。
それでも歩は寄せてくる
完結「勝ったら告白する」!直球の後輩と照れ屋な先輩が織りなす青春将棋ラブコメディ!

- 作者
- 山本崇一朗
- 掲載誌
- 週刊少年マガジン
- ジャンル
- 将棋/ラブコメディ/日常/学園
- 完結
- 完結
- 評価
- 8.8/10
良い点
無表情の後輩が放つ直球の口説き文句と、そのたびに赤くなる先輩のやり取りに悶えます。コロコロ変わるうるし先輩の表情が反則的に可愛く、攻めようとして自分から自爆するところも愛おしいです。全17巻を無駄なくたたみ、第1話の対局を最終回で拾ってみせる終わり方も見事でした。
気になる点
口説く、照れる、指す。このショート発祥ならではの繰り返しが土台なので、通して読むと変化の少なさが気になります。将棋部が舞台のわりに指し手や盤面の説明は大まかで、棋士の死闘を期待すると肩透かしを食らいます。勝つまで告白しないという縛りのぶん、気持ちが丸わかりなのに関係がなかなか進みません。
こんな人におすすめ
直球の口説き文句と、いちいち赤面して悶える先輩のやり取りにニヤニヤしたい人向け。将棋部という舞台を借りた、じれったい片思いのラブコメを探している人にも合います。
こんな人には不向き
同じ型のやり取りが続くとマンネリを感じてしまう人には、17巻は長く映ります。将棋部が舞台なのに本格的な戦術の解説や棋士の死闘を求める人にも向きません。
龍と苺
完結圧倒的闘争心を持つ少女が、男社会の将棋界を実力で蹂躙する痛快サクセスストーリー!

- 作者
- 柳本光晴
- 掲載誌
- 週刊少年サンデー
- ジャンル
- 少年マンガ/将棋/青春/バトル
- 完結
- 完結
- 評価
- 8.5/10
良い点
将棋の知識がなくても勢いだけで読み進められます。対戦相手それぞれの人生と執念が丁寧に描かれるので、気づけば倒された棋士まで好きになっていました。序盤の茶番めいたやり取りが後で伏線として効いてきて、見下してくる相手を実力で黙らせていく運びも爽快です。
気になる点
冒頭から女性を見下すセリフが何度も繰り返され、伏線とわかっていてもしつこく感じます。作画の粗が話の面白さとちぐはぐで、絵の雑さのせいで内容が頭に入ってこない場面もありました。竜王戦の直後に100年後へ飛ぶ運びは飛躍が大きく、そこから先は盤面がほとんど描かれません。
こんな人におすすめ
破天荒な主人公が実力で周りをねじ伏せていく、痛快な無双を求める人に向きます。盤の上の駆け引きを殴り合いのような迫力で楽しみたい人なら、一気に読めるはず。
こんな人には不向き
主人公の暴言や荒っぽい振る舞いが続くと気持ちが離れてしまう人には、序盤がきついです。棋譜や手筋の解説まで踏み込んだ本格派を期待する人にも物足りなさが残ります。
盤上のオリオン
挫折した将棋の神童が、自由奔放な天才少女と出会いプロ棋士の夢へと再び立ち上がる将棋青春ドラマ!

- 作者
- 山本博志/新川直司
- 掲載誌
- 週刊少年マガジン
- ジャンル
- 恋愛/将棋/青春/学園
- 完結
- 連載中
- 評価
- 8.3/10
良い点
挫折した少年が破天荒なヒロインと出会って情熱を取り戻す、王道のボーイミーツガールが気持ちよく決まっています。新川直司の詩のようなセリフと、山本博志五段の監修による奨励会三段リーグの厳しさが同居しているところが面白いです。バー越しの対局やカクテルを絡めた都会的な空気も新鮮でした。
気になる点
勝負の展開と恋愛ドラマの噛み合わせがぎこちなく、中盤以降は場面の切り替わりに唐突さを感じます。女性初のプロを目指すヒロインの内面は掘り下げが浅く、人間関係の進みもかなりゆっくりです。監修が本格的なぶん専門用語や局面の解説は難しく、ルールを知らないと対局のどこが凄いのか掴みきれません。
こんな人におすすめ
挫折した主人公が立ち直っていく青春の過程に、自分を重ねたい人に向きます。将棋の知識がなくても、人間関係の機微やラブストーリーとして読める作品を探している人にもおすすめ。
こんな人には不向き
盤上の対局をリアルに味わいたい将棋ファンには、手筋の描写が足りません。天才が挫折して復活する筋立てに新鮮さを感じにくい人も、途中で飽きるかもしれません。
目的別のおすすめ
よくある質問
掲載作品は全て完結していますか?+
8作品のうち5作品は最終回まで出ています。『永世乙女の戦い方』『3月のライオン』『盤上のオリオン』の3作品は現在も連載中で、結末はまだ描かれていません。まとめて読み切りたいなら完結済みの5作品から、続きを追う時間ごと楽しみたいなら連載中の3作品からどうぞ。
将棋も囲碁もルールを知りませんが楽しめますか?+
大丈夫です。『ヒカルの碁』『月下の棋士』『龍と苺』『3月のライオン』あたりは、駒や石の動かし方を知らないまま開いても話に入っていけます。逆に『永世乙女の戦い方』『盤上のオリオン』は監修つきで踏み込むぶん、専門用語に少し戸惑うかもしれません。
囲碁を題材にした作品はどれですか?+
8作品のうち囲碁が題材なのは『ヒカルの碁』の1作品で、残りの7作品は将棋を扱っています。長編として積み上がった囲碁漫画そのものが少ないので、囲碁から入りたいならまず『ヒカルの碁』を手に取ってみてください。
まとめ
8作品を並べてみて思ったのは、将棋でも囲碁でも描かれているものは同じだということ。勝ちたい、強くなりたい、あの人に届きたい。その願いを盤の前で剥き出しにした人たちの話です。ルールを知らないまま開いても大丈夫なので、気になった一冊から手に取ってみてください。私はこの並びを作りながら、結局また『ヒカルの碁』を読み返してしまいました。